入院基本料は、基本的な入院医療の体制を評価したもので、医学的管理、看護、寝具類等を所定点数の中で包括的に評価しています。
病院は一般病棟、療養病棟、結核病棟、精神病棟、特定機能病院(一般病棟、結核病棟、精神病棟)、専門病院、障害者施設等、診療所は有床診療所、有床診療所療養病床の各入院基本料があります。
今回の改定では、医療従事者の賃上げに対応するため、各入院基本料の引き上げ等が実施されています。
栄養管理体制の基準
意思決定支援の基準
身体的拘束最小化の基準
今回の改定により、入院基本料の通則にある栄養管理の基準のうち、栄養管理手順の作成に関する規定について、標準的な栄養評価手法の活用と退院時も含めた定期的な栄養状態を評価することが明確化(下線部が追加部分)されました。
また、ガイドラインに沿った「適切な意思決定支援に関する指針」を定めていることと、身体的拘束を最小化するための取り組みを実施していることが追加されました。身体的拘束については、基準を満たしていない場合は、入院料が1日につき40点減算となります。
【意思決定支援の主な基準】
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。ただし、小児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院医療管理料、小児入院医療管理料又は児童・思春期精神科入院医療管理料を算定する病棟のみを有する医療機関はこの限りでない
- 2024年3月31日時点での入院基本料又は特定入院料の届出病棟・病床は、25年5月31日までは経過措置
【身体的拘束最小化の主な基準】
- ①患者又は他の患者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束を行ってはならない
- ②①の身体的拘束を行う場合には、その態様及び時間、その際の患者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない
- ③身体的拘束とは、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいう
- ④身体的拘束最小化対策に係る専任の医師及び専任の看護職員から構成される身体的拘束最小化チームが設置されている。なお、必要に応じて、薬剤師等、入院医療に携わる多職種が参加していることが望ましい
- ⑤身体的拘束最小化チームでは、以下の業務を実施する
-
ア)身体的拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知徹底する
-
イ)身体的拘束を最小化するための指針を作成し、職員に周知し活用する
-
ウ)入院患者に係わる職員を対象として、身体的拘束の最小化に関する研修を定期的に行う
-
- ⑥①~⑤までの規定に関わらず、精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む)における身体的拘束の取扱いについては、精神保健福祉法の規定による
- ⑦2024年3月31日時点での入院基本料等の届出病棟・病床は、25年5月31日まで①~⑤の基準は経過措置
一般病棟入院基本料
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度
今回の改定では、「A項目(モニタリング及び処置等)」及び「C項目(手術等の医学的状況)」の評価項目・配点・評価期間等が次のように見直されました。
【一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の評価票】
〈A項目(モニタリング及び処置等)〉
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | |
---|---|---|---|---|
1
創傷処置(褥瘡の処置を除く)※1
|
なし | あり | ― | ― |
2
呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)※1
|
なし | あり | ― | ― |
3
注射薬剤3種類以上の管理(最大7日間)
|
なし | あり | ― | ― |
4
シリンジポンプの管理
|
なし | あり | ― | ― |
5
輸血や血液製剤の管理
|
なし | ― | あり | ― |
6 専門的な治療・処置※2 | ― | ― | ||
① 抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ) | あり | |||
② 抗悪性腫瘍剤の内服の管理 | あり | |||
③ 麻薬の使用(注射剤のみ) | あり | |||
④ 麻薬の内服、貼付、坐剤の管理 | あり | |||
⑤ 放射線治療 | あり | |||
⑥ 免疫抑制剤の管理(注射剤のみ) | あり | |||
⑦ 昇圧剤の使用(注射剤のみ) | あり | |||
⑧ 抗不整脈剤の使用(注射剤のみ) | あり | |||
⑨ 抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用 | あり | |||
⑩ ドレナージの管理 | あり | |||
⑪ 無菌治療室での治療 | あり | |||
7
Ⅰ:
救急搬送後の入院(2日間)
Ⅱ:
緊急入院を必要とする状態(2日間)
|
なし | ― | あり | ― |
※1: 「創傷処置(褥瘡の処置を除く)」及び「呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)」については、必要度Ⅰの場合も、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度A・C項目に係るレセプト電算処理システム用コード一覧に掲げる診療行為を実施したときに限り、評価の対象となる
※2: 「専門的な治療・処置」については、①抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)、③麻薬の使用(注射剤のみ)、⑦昇圧剤の使用(注射剤のみ)、⑧抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)、⑨抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用又は⑪無菌治療室での治療のいずれか1つ以上該当した場合は3点、その他の項目のみに該当した場合は2点とする
〈C項目(手術等の医学的状況〉
0点 | 1点 | |
---|---|---|
開頭手術(11日間) | なし | あり |
開胸手術(9日間) | なし | あり |
開腹手術(6日間) | なし | あり |
骨の手術(10日間) | なし | あり |
胸腔鏡・腹腔鏡手術(4日間) | なし | あり |
全身麻酔・脊椎麻酔の手術(5日間) | なし | あり |
救命等に係る内科的治療(4日間)
|
なし | あり |
別に定める検査(2日間)(例:経皮的針生検法) | なし | あり |
別に定める手術(5日間)(例:眼窩内異物除去術) | なし | あり |
急性期一般入院基本料
看護職員配置が7対1~10対1の一般病棟が算定する入院基本料です。
今回の改定では、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の扱いが見直され、入院料1については「B項目」(患者の状況等)が廃止され、「該当患者」の要件も次のように見直されました。ただし、入院料2~5については、これまでどおり「A得点2点以上かつB得点3点以上」「A得点3点以上」「C得点1点以上」のいずれかを満たす患者を「該当患者」とします。
【急性期一般入院料1における「重症度、医療・看護必要度」の該当患者の要件】
-
次のいずれも満たす患者
- ①「A得点が3点以上」又は「C得点が1点以上」
- ②「A得点が2点以上」又は「C得点が1点以上」
この他、これまでは「該当患者割合」の基準は許可病床が200床以上・未満で分かれていましたが、今回の改定で一本化されました。
区分 | 急性期 一般 入院料1 |
急性期 一般 入院料2 |
急性期 一般 入院料3 |
急性期 一般 入院料4 |
急性期 一般 入院料5 |
急性期 一般 入院料6 |
特別入院 基本料 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基本点数(1日につき) | 1,688点 | 1,644点 | 1,569点 | 1,462点 | 1,451点 | 1,404点 | 612点 | ||
看護職員 | 7対1以上 | 10対1以上 | |||||||
看護師比率 | 70%以上 | ||||||||
重症度、医療・ 看護必要度の 基準を満たす 患者割合※1、2 |
Ⅰ | ①21%以上 ②28%以上 |
22%以上 | 19%以上 | 16%以上 | 12%以上 | 測定のみ | ||
Ⅱ | ①20%以上 ②27%以上 |
21%以上 | 18%以上 | 15%以上 | 11%以上 | 測定のみ | |||
平均在院日数 | 16日以内 | 21日以内 | |||||||
在宅復帰・病床機能連携率 | 80%以上 | ― | |||||||
データ提出加算 | 要 | ||||||||
入院期間に応じた加算 (1日につき) |
14日 以内 |
+450点 | +300点 | ||||||
15~ 30日 |
+192点 | +155点 | |||||||
算定可能な入院基本料等加算 | 総合入院体制加算/急性期充実体制加算(入院料1に限る)/地域医療支援病院入院診療加算/臨床研修病院入院診療加算/紹介受診重点医療機関入院診療加算/救急医療管理加算/超急性期脳卒中加算/妊産婦緊急搬送入院加算/在宅患者緊急入院診療加算/診療録管理体制加算/医師事務作業補助体制加算/急性期看護補助体制加算/看護職員夜間配置加算/乳幼児加算・幼児加算/特定感染症入院医療管理加算/難病等特別入院診療加算/超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算/地域加算/離島加算/療養環境加算/HIV感染者療養環境特別加算/特定感染症患者療養環境特別加算/重症者等療養環境特別加算/小児療養環境特別加算/無菌治療室管理加算/放射線治療病室管理加算/緩和ケア診療加算/小児緩和ケア診療加算/精神科リエゾンチーム加算/強度行動障害入院医療管理加算/依存症入院医療管理加算/摂食障害入院医療管理加算/がん拠点病院加算/リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算/栄養サポートチーム加算/医療安全対策加算/感染対策向上加算/患者サポート体制充実加算/報告書管理体制加算/褥瘡ハイリスク患者ケア加算/ハイリスク妊娠管理加算/ハイリスク分娩管理加算/呼吸ケアチーム加算/術後疼痛管理チーム加算/後発医薬品使用体制加算/バイオ後続品使用体制加算/病棟薬剤業務実施加算1/データ提出加算/入退院支援加算(1の一般病棟入院基本料等の場合、2の一般病棟入院基本料等の場合又は3に限る)/医療的ケア児(者)入院前支援加算/認知症ケア加算/せん妄ハイリスク患者ケア加算/精神疾患診療体制加算/薬剤総合評価調整加算/排尿自立支援加算/地域医療体制確保加算/協力対象施設入所者入院加算 |
※1: 2024年3月31日時点での届出医療機関は同年9月30日まで経過措置
※2: 入院料1を算定する病棟(許可病床200床未満の医療機関で電子カルテシステムを導入していない場合を除く)、許可病床200床以上の医療機関で入院料2又は3の病棟、許可病床400床以上の医療機関で入院料4又は5の病棟は「Ⅱ」を用いること。ただし、2024年3月31日時点での届出病棟は同年9月30日まで経過措置
注1) 「夜勤を行う看護職員の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下」の基準のみ満たしていない場合は、当該基準に適合しなくなった後の直近3カ月間に限り「月平均夜勤時間超過減算」として、所定点数の15%を減算する。また、3カ月を超えた場合は、当分の間、夜勤時間特別入院基本料として所定点数の70%に相当する点数を算定できる
注2) 許可病床数が100床未満の病院で、夜間救急外来対応のため一時的に救急外来で勤務する間、当該病棟における夜勤看護職員数が2未満となった日で、なおかつ「年6日以内であること」「当該日が属する月が連続する2カ月以内であること」のいずれも該当する場合は「夜間看護体制特定日減算」として所定点数の5%を減算
注3) 退院が特定の時間帯(午前退院)に集中している医療機関や、入院日及び退院日が特定の日(金曜入院・月曜退院)に集中している医療機関として別に定める医療機関は、所定点数の92%で算定
注4) 90日を超えて入院する患者については、①一般病棟入院基本料を算定(平均在院日数の算定の対象)、②療養病棟入院料1の点数を算定(平均在院日数の算定の対象外)―のいずれかを選択する。この場合、病棟ごとに①と②の選択が可能だが、②により算定する場合については、あらかじめ地方厚生局に届出が必要
地域一般入院基本料
看護職員配置が13対1か15対1の一般病棟が算定する入院基本料です。
区分 | 地域一般 入院料1 |
地域一般 入院料2 |
地域一般 入院料3 |
特別入院 基本料 |
---|---|---|---|---|
基本点数(1日につき) | 1,176点 | 1,170点 | 1,003点 | 612点 |
看護職員 | 13対1以上 | 15対1以上 | ||
看護師比率 | 70%以上 | 40%以上 | ||
平均在院日数 | 24日以内 | 60日以内 | ||
重症度、医療・看護必要度 | 測定している | ― | ― | |
データ提出加算※1 | 要 | |||
入院期間に応じた加算(1日につき) | 14日以内 +450点 | 同+300点 | ||
15日~30日 +192点 | 同+155点 | |||
重症児(者)受入連携加算 | +2,000点(入院初日) | ― | ||
救急・在宅等支援病床初期加算 (1日につき) |
+150点(14日限度) | ― |
※1: 2024年3月31日時点で、急性期一般入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟)、専門病院入院基本料(7対1、10対1)、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料1~4の病棟・病室のいずれも有しない許可病床200床未満の医療機関であって、データ提出加算の届出が困難であることについて正当な理由がある場合は、当分の間、要件を満たすものとする。また、入院料3のうち、新規開設する場合は1年間に限り、要件を満たしているものとする
注) 算定可能な入院基本料等加算については、急性期一般入院基本料の点数等一覧表を参照(ただし、急性期充実体制加算、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算、急性期看護補助体制加算、看護職員夜間配置加算、術後疼痛管理チーム加算、せん妄ハイリスク患者ケア加算、地域医療体制確保加算は算定不可。また、同表中の加算とは別に看護配置加算〔入院料3のみ〕と看護補助加算が算定可)。各種の減算規定、入院期間が90日を超える患者の扱い等は同表の注1~4を参照