診療報酬

疾患別リハビリテーション

疾患別リハビリテーションには、心大血管疾患、脳血管疾患等、運動器、呼吸器、廃用症候群の各リハビリテーション(以下、リハビリ)があります(各リハビリの主な施設基準は参照)。

疾患別リハビリの所定単位は「20分1単位」で、1単位ごとの点数が設定(20分未満は基本診療料に含まれる)されています。1人の患者に算定できるのは「1日6単位」までですが、別に定められた患者には「1日9単位」まで算定できます。

また、通則として、①訓練内容の要点及び実施時刻を診療録等へ記載、②リハビリ実施計画書の作成、③開始時と原則3カ月に1回以上、当該実施計画書を患者へ説明の上交付するとともに、写しを診療録に添付する―などの要件があります。

今回の改定では、各疾患別リハビリ料の要件として、患者の転院時には、転院先の医療機関にリハビリ実施計画書を提供することが追加されました。また、脳血管疾患・廃用症候群・運動器の各リハビリ料の要件には介護保険の通所・訪問リハビリ事業所等との連携が追加されました(参照)。これに伴い、「リハビリテーション計画提供料」が廃止されています。また、加算として「急性期リハビリテーション加算」(参照)が新設されました。

この他、NDBやDPCデータで実態を把握できるように、リハビリの実施者ごと(理学療法士、作業療法士、医師、看護師、集団療法)に点数が区分されました。ただし、点数自体に変更はありません。

疾患別リハビリテーションの点数等一覧
区分 心大血管疾患 脳血管疾患等※2 廃用症候群※2 運動器※2 呼吸器
点数(1単位) (Ⅰ) 205点 245点(147点) 180点(108点) 185点(111点) 175点
(Ⅱ) 125点※1 200点(120点) 146点(88点) 170点(102点) 85点
(Ⅲ) 100点(60点) 77点(46点) 85点(51点)
  早期リハビリテーション加算 +25点(1単位につき、30日限度、入院患者のみ※3、初期加算・急性期リハビリ加算と併算定可)
初期加算 +45点(1単位につき、14日限度、入院患者のみ※3、早期リハビリ加算・急性期リハビリ加算と併算定可)
急性期リハビリテーション加算 +50点(1単位につき、14日限度、入院患者のみ、早期リハビリ加算・初期加算と併算定可)
リハビリテーションデータ提出加算 +50点(月1回)
標準的算定日数※5 治療開始日から150日以内 発症、手術、急性増悪※4又は最初の診断日から180日以内 廃用症候群の診断又は急性増悪※4から120日以内 発症、手術、急性増悪※4又は最初の診断日から150日以内 治療開始日から90日以内
患者1人当たり1日算定限度 6単位まで(ただし、①回復期リハビリ病棟入院料又は特定機能病院リハビリ病棟入院料の算定患者〔運動器リハビリ料の算定患者を除く〕)、②脳血管疾患等の患者のうちで発症後60日以内の患者、③入院患者で病棟等において早期歩行、ADLの自立等を目的としてリハビリを行った各疾患別リハビリ料(Ⅰ)の患者―は1日9単位まで)
算定日数上限の対象から除外される疾患等(各疾患別リハビリ共通) 失語症、失認及び失行症/高次脳機能障害/重度の頸髄損傷/頭部外傷及び多部位外傷/慢性閉塞性肺疾患(COPD)/心筋梗塞/狭心症/軸索断裂の状態にある末梢神経損傷(発症後1年以内に限る)/外傷性の肩関節腱板損傷(受傷後180日以内に限る)/回復期リハビリ病棟入院料又は特定機能病院リハビリ病棟入院料の算定患者/回復期リハビリ病棟又は特定機能病院リハビリ病棟の在棟中に回復期リハビリ病棟入院料又は特定機能病院リハビリ病棟入院料を算定した患者であって、当該病棟の退棟日から3カ月以内の患者(入院中の患者、介護老人保健施設又は介護医療院に入所する患者を除く)/難病患者リハビリ料に規定する患者(先天性又は進行性の神経・筋疾患の者を除く)/障害児(者)リハビリ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病の者に限る)/その他リハビリを継続して行うことが必要であると医学的に認められるもの/先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者/障害児(者)リハビリ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病の者を除く)

※1: 急性心筋梗塞及び大血管疾患は発症後(手術を実施した場合は手術後)1カ月以上経過したものに限る

※2: 要介護被保険者等に対し、一定期間(脳血管疾患等は60日、廃用症候群は40日、運動器は50日)を経過した後に、引き続きリハビリを実施する場合で、過去3カ月以内に目標設定等支援・管理料を算定していない場合には、所定点数の90%で算定

※3: 脳血管疾患等の場合は、脳卒中の患者であって、当該医療機関を退院したもの又は他の医療機関を退院したもの(地域連携診療計画加算の算定患者に限る)は入院以外も算定可。運動器の場合は、大腿骨頸部骨折の患者であって、当該医療機関を退院したもの又は他の医療機関を退院したもの(地域連携診療計画加算の算定患者に限る)は入院以外でも算定可

※4: 疾患別リハビリの対象となる疾患の増悪等により、1週間以内にFIM又はBIが10以上(指定難病の患者は5以上)低下するような状態等に該当する場合をいう

※5: 標準的算定日数を超えてリハビリを行う場合は月1回以上、機能的自立度評価法(FIM)を測定していること

注) 上記にかかわらず、必要があって標準的算定日数を超えてリハビリを行った場合は月13単位に限り算定できる。その場合、脳血管疾患等、廃用症候群、運動器については、患者が入院中の要介護被保険者等の場合は( )内の点数を算定する

疾患別リハビリテーション料の対象
心大血管疾患
  • 急性心筋梗塞、狭心症発作その他の急性発症した心大血管疾患又はその手術後の患者
  • 慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している患者
脳血管疾患等
  • 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血その他の急性発症した脳血管疾患又はその手術後の患者
  • 脳腫瘍、脳膿瘍、脊髄損傷、脊髄腫瘍その他の急性発症した中枢神経疾患又はその手術後の患者
  • 多発性神経炎、多発性硬化症、末梢神経障害その他の神経疾患の患者
  • パーキンソン病、脊髄小脳変性症その他の慢性の神経筋疾患の患者
  • 失語症、失認及び失行症並びに高次脳機能障害の患者
  • 難聴や人工内耳植込手術等に伴う聴覚・言語機能の障害を有する患者
  • 顎・口腔の先天異常に伴う構音障害を有する患者
  • 舌悪性腫瘍等の手術による構音障害を有する患者
  • リハビリを要する状態の患者であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの(ただし、心大血管疾患、廃用症候群、運動器、呼吸器、障害児(者)、がん患者の各リハビリ料の対象患者に該当するものを除く)
廃用症候群
  • 急性疾患等に伴う安静による廃用症候群の患者であって、一定程度以上(治療開始時にFIMで115以下、BIで85以下の状態等)の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの
運動器
  • 上・下肢の複合損傷、脊椎損傷による四肢麻痺その他の急性発症した運動器疾患又はその手術後の患者
  • 関節の変性疾患、関節の炎症性疾患その他の慢性の運動器疾患により、一定程度以上の運動機能及び日常生活能力の低下を来している患者
呼吸器
  • 肺炎、無気肺、その他の急性発症した呼吸器疾患の患者
  • 肺腫瘍、胸部外傷その他の呼吸器疾患又はその手術後の患者
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息その他の慢性の呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来している患者
  • 食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌、大腸癌、卵巣癌、膵癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要する患者
疾患別リハビリテーション料の主な施設基準
項目名 医師※1 療法士全体 理学療法士
(PT※2
作業療法士
(OT※2
言語聴覚士
(ST※2、3
訓練室面積
(内法による)
心大血管疾患リハビリテーション料 (Ⅰ)
  • 循環器内科又は心臓血管外科の医師が実施時間帯に常時勤務
  • 専任常勤1名以上
専従常勤PT及び専従常勤看護師合わせて2名以上(うち1名は専任で可)等 必要に応じて配置 病院:30㎡以上
診療所:20㎡以上
(Ⅱ) 実施時間帯に循環器内科又は心臓血管外科の医師及び経験を有する医師(いずれも非常勤を含む)が1名以上勤務 専従のPT又は看護師いずれか1名以上
脳血管疾患等リハビリテーション料※4 (Ⅰ) 専任常勤2名以上 専従従事者合計10名以上 専従常勤PT5名以上 専従常勤OT3名以上 (言語聴覚療法を行う場合)専従常勤ST1名以上 160㎡以上
(言語聴覚療法を行う場合は8㎡以上の専用室が1室以上)
(Ⅱ) 専任常勤1名以上 専従従事者合計4名以上 専従常勤PT1名以上 専従常勤OT1名以上 病院:100㎡以上
診療所:45㎡以上
(言語聴覚療法を行う場合は8㎡以上の専用室が1室以上)
(Ⅲ) 専従の常勤PT、常勤OT又は常勤STのいずれか1名以上
廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)~(Ⅲ) 脳血管疾患等リハビリテーション料に準じる
運動器リハビリテーション料 (Ⅰ) 専任常勤1名以上 専従の常勤PT又は常勤OT合わせて4名以上 病院:100㎡以上
診療所:45㎡以上
(Ⅱ) 専従の常勤PT2名以上又は専従の常勤OT2名以上あるいは専従の常勤PT及び常勤OTが合わせて2名以上
(Ⅲ) 専従の常勤PT又は常勤OTが1名以上 45㎡以上
呼吸器リハビリテーション料 (Ⅰ) 専任常勤1名以上 専従の常勤PT1名を含む常勤PT、常勤OT又は常勤STが合わせて2名以上 病院:100㎡以上
診療所:45㎡以上
(Ⅱ) 専従の常勤PT、常勤OT又は常勤STが1名以上 45㎡以上
注) いずれのリハビリテーション料も上記に加え、所定の器械・器具を具備すること
※1: 常勤医師は、週3日以上かつ週22時間以上の勤務を行っている複数の非常勤医師を組み合わせた常勤換算でも配置可能
※2: 常勤PT・常勤OT・常勤STは、週3日以上かつ週22時間以上の勤務を行っている複数の非常勤職員を組み合わせた常勤換算でも配置可能(ただし、2名以上の常勤職員が要件のものについて、常勤職員が配置されていることとみなすことができるのは、一定の人数まで)
※3: 言語聴覚士については各項目で兼任可能
※4: 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)において、言語聴覚療法のみを実施する場合は、上記規定によらず、以下を満たす場合に算定可能
・医師:専任常勤1名以上・専従常勤ST3名以上・専用室(8㎡以上)及び器械・器具の具備あり
また、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ)について、言語聴覚療法のみを実施する場合、以下を満たす場合に算定可能
・医師:専任常勤1名以上・専従常勤ST2名以上・専用室(8㎡以上)及び器械・器具の具備あり

【疾患別リハビリ料の要件の見直し(下記を追加)】

  • 【脳血管疾患等・廃用症候群・運動器リハビリ料】
    要介護認定を申請中の者又は要介護被保険者等であって、介護保険によるリハビリへの移行を予定しているものについて、患者の同意が得られた場合に、利用予定の通所リハビリ事業所等に対して、3カ月以内に作成したリハビリ実施計画書等を文書により提供する。利用予定の通所リハビリ事業所等とは、当該患者、家族等又は介護支援専門員を通じ、患者の利用意向が確認できた事業所等をいう。この場合において、当該患者が直近3カ月以内に目標設定等支援・管理料を算定している場合には、目標設定等支援・管理シートも併せて提供する
  • 【各疾患別リハビリ料】
    リハビリを実施した患者であって、転医や転院に伴い他の医療機関でリハビリが継続される予定の患者について、患者の同意が得られた場合、3カ月以内に作成したリハビリ実施計画書等を当該他の医療機関に対して文書で提供する。当該患者が直近3カ月以内に目標設定等支援・管理料を算定している場合には目標設定等支援・管理シートも併せて提供する

急性期リハビリテーション加算 50点(1単位につき、14日限度)

今回の改定で、重症者に対する早期からの急性期リハビリの提供をいっそう推進するため、疾患別リハビリ料への加算として新設された点数です。

入院中である次の患者に対してリハビリを行った場合に発症、手術もしくは急性増悪から7日目又は治療開始日のいずれか早いものから起算して14日を限度に算定できます。また、同じく疾患別リハビリ料の加算である早期リハビリテーション加算、初期加算と併算定できます。

主な施設基準としては、「リハビリ科の常勤医が1名以上配置(複数の非常勤医の組み合わせでも可)」が求められます。

【対象患者及び主な算定要件】

  • 次のア~エのいずれかに該当する入院中の患者
    1. ア)
      ADLの評価であるBIが10点以下
    2. イ)
      「『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』の活用について」におけるランクM以上
    3. ウ)
      以下に示す処置等が実施されているもの
      1. 動脈圧測定(動脈ライン)
      2. シリンジポンプの管理
      3. 中心静脈圧測定(中心静脈ライン)
      4. 人工呼吸器の管理
      5. 輸血や血液製剤の管理
      6. 特殊な治療法等(CHDF、IABP、PCPS、補助人工心臓、ICP測定、ECMO)
    4. エ)
      特定感染症入院医療管理加算の対象となる感染症、感染症法に規定する二類感染症及び新型インフルエンザ等感染症の患者及び当該感染症を疑うもの。ただし、疑似症患者については初日に限り算定する。なお、当該患者に対して「特定感染症入院医療管理加算」を算定している必要はない
  • レセプトの摘要欄にアからエまでのいずれに該当するかを日毎に記載する
その他のリハビリテーション料
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