外来腫瘍化学療法診療料
外来の悪性腫瘍の患者に対して、多職種が協働しながら化学療法の実施やその他の治療管理を行った場合を評価している項目です。
今回の改定では、「イ.抗悪性腫瘍剤を投与した場合」と「ロ.それ以外の必要な治療管理を行った場合」に区分されたほか、投与回数に応じた評価とするなど体系が見直されました。「ロ」は、「イ」の算定日以外の日に抗悪性腫瘍剤の投与以外の治療管理を行った場合に算定します(診療料1のロは、連携先医療機関の患者に対し、緊急に抗悪性腫瘍剤の投与以外の治療管理を行った場合でも算定可)。
また、施設基準が見直されるとともに、専任の医師、看護師、薬剤師を常時配置できない医療機関であっても、電話等による24時間の連絡体制を整えている医療機関への評価として同診療料3が新設されました。
加算としては、「小児加算(15歳未満)」(200点)、「連携充実加算」(150点、月1回)(診療料1のイの〔1〕が対象)がありますが、今回の改定で「バイオ後続品導入初期加算」が廃止(注射の部で評価)され、「がん薬物療法体制充実加算」が新設されました。また、所定の要件を満たせば、「外来感染対策向上加算」(その加算を含む)(参照)も算定できます。
【外来腫瘍化学療法診療料の点数】
【主な算定要件】
- 診療料3の届出医療機関で外来化学療法を実施している患者が、連携する診療料1の医療機関を緊急的な副作用等で受診した場合には、「診療料1のロ」を算定できる。ただし、あらかじめ治療等に必要な情報を文書(電子媒体を含む)により当該診療料3の届出医療機関から受理している場合に限る
- 患者の心理状態に十分配慮された環境で、治療内容、治療計画、副作用、注意点等について説明及び指導等を行う(患者の十分な理解が得られない場合又は家族等にのみ説明を行った場合は算定不可)
- 抗悪性腫瘍剤の注射は専用室で行う
- 患者からの電話等による緊急の相談等に対して24時間対応できる体制を確保し、連絡先電話番号及び緊急時の注意事項等について、文書により提供する
- 診療料1は、当該医療機関で実施される化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価し、承認する委員会(他の医療機関との共同開催を含む)で承認され、登録されたレジメンで治療を行ったときのみ算定できる
- 診療料3の届出医療機関は、連携する診療料1の届出医療機関に対して、緊急時に受診を希望する患者について、あらかじめ治療等に必要な情報を文書により、治療開始時に1回、以降は適宜必要に応じて提供している
【主な施設基準】
〈外来腫瘍化学療法診療料1〉
- ①外来化学療法を実施するための専用のベッド(リクライニングシート等を含む)を有する治療室を保有している。外来化学療法の実施時は治療室を外来化学療法その他の点滴注射(輸血を含む)以外の目的で使用することは認められない
- ②化学療法の経験5年以上の専任常勤医師が勤務
- ③化学療法の経験5年以上の専任看護師が化学療法を実施している時間帯に常時治療室に勤務
- ④化学療法の調剤経験5年以上の専任常勤薬剤師が勤務
- ⑤専任の医師、看護師又は薬剤師が院内に常時1人以上配置され、電話等による緊急の相談等に24時間対応できる連絡体制が整備されている
- ⑥急変時等の緊急時に患者が入院できる体制を確保(他医療機関との連携でも可)
- ⑦化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価し、承認する委員会を開催している。委員会は化学療法に携わる各診療科の医師の代表者(代表者数は、複数診療科の場合はそれぞれの診療科で1名以上〔1診療科の場合は2名以上〕)、業務に携わる看護師、薬剤師及び必要に応じてその他の職種から構成され、年1回開催する
- ⑧がん性疼痛緩和指導管理料の届出
- ⑨がん患者指導管理料のロの届出が望ましい
- ⑩②の医師は、緩和ケアに関する研修(別途規定、本誌では割愛)の修了者である(2024年3月31日時点の届出医療機関は24年9月30日まで経過措置)
- ⑪患者と事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書の提出があった場合に、就労と療養の両立に必要な情報を提供する並びに情報提供後の勤務環境の変化を踏まえ療養上必要な指導を行うことが可能である旨をウェブサイトに掲載していることが望ましい
- ⑫患者の急変時の緊急事態等に対応するための指針が整備されていることが望ましい
- ⑬診療料3の届出医療機関において外来化学療法を実施している患者が、緊急時に受診できる体制を確保している場合は、連携する医療機関の名称等をあらかじめ地方厚生(支)局長に届け出ている。また、連携する医療機関の名称等については、当該医療機関の見やすい場所に掲示している(2024年3月31日時点の届出医療機関は24年9月30日まで経過措置)
- ⑭⑤、⑥及び⑦に係る対応を行っていることについて、医療機関の見やすい場所に掲示している
- ⑮⑬及び⑭の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載している。自ら管理するホームページ等を有しない場合は、この限りではない(2024年3月31日時点の届出医療機関は25年5月31日まで経過措置)
〈外来腫瘍化学療法診療料2〉
- ①診療料1の①、⑤、⑥、⑪、⑫を満たす
- ②化学療法の経験を有する専任看護師が化学療法の実施時間帯に常時治療室に勤務
- ③当該化学療法につき専任の常勤薬剤師が勤務
〈外来腫瘍化学療法診療料3〉
- ①診療料1の①、⑥、⑪、⑫を満たす
- ②診療料2の②、③を満たす
- ③外来化学療法を実施する患者に対して、診療料1の届出医療機関との連携により、緊急時に有害事象等の診療ができる連携体制を確保している。また、連携する医療機関の名称等については、あらかじめ地方厚生(支)局長に届出を行い、かつ、その情報を医療機関の見やすい場所に掲示している
- ④③の掲示事項は、原則としてウェブサイトに掲載している。自ら管理するホームページ等を有しない場合は、この限りではない(2025年5月31日まで経過措置)
- ⑤標榜時間外において、外来化学療法を実施している患者に関する電話等の問合せに応じる体制を整備する。また、やむを得ない事由により電話等による問い合わせに応じることができなかった場合であっても、速やかにコールバックできる体制がとられている
がん薬物療法体制充実加算
100点(月1回)
今回の改定により、診療料1に新設された加算です。「イ」(1)の算定患者に対して、医師の指示を受けた薬剤師が、医師の診察前に服薬状況、副作用の有無等の情報を患者から直接収集し、評価を行った上で医師に情報提供や処方提案等を行った場合に算定できます。
【主な施設基準】
- 外来腫瘍化学療法診療料1の届出
- 化学療法の調剤経験5年以上で、40時間以上のがんに係る適切な研修を修了し、がん患者に対する薬剤管理指導の実績を50症例(複数のがん種であることが望ましい)以上有する専任の常勤薬剤師が配置
- 患者の希望に応じて、心理状況及びプライバシーに十分配慮した構造の個室を使用できるように備えている
- 薬剤師が、医師の診察前に患者から服薬状況、副作用等の情報収集及び評価を実施し、情報提供や処方提案等を行った上で、医師がそれを踏まえて、より適切な診療方針を立てることができる体制が整備されている