入院基本料は、基本的な入院医療の体制を評価したもので、医学的管理、看護、寝具類等を所定点数の中で包括的に評価しています。
病院は一般病棟、療養病棟、結核病棟、精神病棟、特定機能病院(一般病棟、結核病棟、精神病棟)、専門病院、障害者施設等、診療所は有床診療所、有床診療所療養病床の各入院基本料があります。
一般病棟入院基本料
今回の改定では、急性期一般入院基本料における「重症度、医療・看護必要度」の見直しなどが実施されています。
急性期一般入院基本料
看護職員配置が7対1か10対1の一般病棟が算定する入院基本料です。「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たす患者割合を「実績部分」の指標とし、入院料1~7までの7区分で評価されていましたが、今回の改定では入院料6が削除されて6区分になるとともに(従来の入院料7が6に変更)、各入院料の患者割合の基準が見直されています。
具体的な点数や主な施設基準等は次表のとおりです(「重症度、医療・看護必要度」の扱いは一般病棟用の重症度、医療・看護必要度を参照)。
区分 | 急性期 一般 入院料1 |
急性期 一般 入院料2 |
急性期 一般 入院料3 |
急性期 一般 入院料4 |
急性期 一般 入院料5 |
急性期 一般 入院料6※1 |
特別入院 基本料 |
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基本点数(1日につき) | 1,650点 | 1,619点 | 1,545点 | 1,440点 | 1,429点 | 1,382点 | 607点 | ||
看護職員 | 7対1以上 | 10対1以上 | |||||||
看護師比率 | 70%以上 | ||||||||
重症度、医療・ 看護必要度の 基準を満たす 患者割合※2、3 |
Ⅰ | 許可病 床200 床以上 |
31%以上 | 27%以上 | 24%以上 | 20%以上 | 17%以上 | 測定のみ | |
許可病 床200 床未満 |
28%以上 | 25%以上 | 22%以上 | 18%以上 | |||||
Ⅱ | 許可病 床200 床以上 |
28%以上 | 24%以上 | 21%以上 | 17%以上 | 14%以上 | 測定のみ | ||
許可病 床200 床未満 |
25%以上 | 22%以上 | 19%以上 | 15%以上 | |||||
平均在院日数 | 18日以内 | 21日以内 | |||||||
在宅復帰・病床機能連携率 | 80%以上 | ― | |||||||
データ提出加算 | 要 | ||||||||
初期加算 (1日につき) |
14日 以内 |
+450点 | +300点 | ||||||
15~ 30日 |
+192点 | +155点 | |||||||
ADL維持向上等体制加算 (1日につき、14日限度) |
+80点 | ― | |||||||
算定可能な入院基本料等加算 | 総合入院体制加算/急性期充実体制加算(入院料1に限る)/地域医療支援病院入院診療加算/臨床研修病院入院診療加算/紹介受診重点医療機関入院診療加算/救急医療管理加算/超急性期脳卒中加算/妊産婦緊急搬送入院加算/在宅患者緊急入院診療加算/診療録管理体制加算/医師事務作業補助体制加算/急性期看護補助体制加算/看護職員夜間配置加算/乳幼児加算・幼児加算/難病等特別入院診療加算/超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算/地域加算/離島加算/療養環境加算/HIV感染者療養環境特別加算/二類感染症患者療養環境特別加算/重症者等療養環境特別加算/小児療養環境特別加算/無菌治療室管理加算/放射線治療病室管理加算/緩和ケア診療加算/精神科リエゾンチーム加算/強度行動障害入院医療管理加算/依存症入院医療管理加算/摂食障害入院医療管理加算/がん拠点病院加算/栄養サポートチーム加算/医療安全対策加算/感染対策向上加算/患者サポート体制充実加算/報告書管理体制加算/褥瘡ハイリスク患者ケア加算/ハイリスク妊娠管理加算/ハイリスク分娩管理加算/呼吸ケアチーム加算/術後疼痛管理チーム加算/後発医薬品使用体制加算/病棟薬剤業務実施加算1/データ提出加算/入退院支援加算(1の一般病棟入院基本料等の場合、2の一般病棟入院基本料等の場合又は3に限る)/認知症ケア加算/せん妄ハイリスク患者ケア加算/精神疾患診療体制加算/薬剤総合評価調整加算/排尿自立支援加算/地域医療体制確保加算 |
※1: 改定前の入院料6は廃止され、改定前の入院料7が入院料6の扱いに変更。ただし、2022年3月末時点で入院料6の届出医療機関は2022年9月末まで改定前の入院料6が算定可能
※2: 2022年3月末時点での届出医療機関は同年9月末まで経過措置
※3: 許可病床200床以上の病院で入院料1を算定する病棟は「Ⅱ」を用いること。ただし、2022年3月末時点で入院料1の届出病棟(許可病床200床以上400床未満の医療機関に限る)については、2022年12月末まで経過措置。また、許可病床400床以上の病院で入院料2~5を算定する病棟は「Ⅱ」を用いること
注1) 「夜勤を行う看護職員の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下」の基準のみ満たしていない場合は、当該基準に適合しなくなった後の直近3カ月間に限り「月平均夜勤時間超過減算」として、所定点数の15%を減算する。また、3カ月を超えた場合は、当分の間、夜勤時間特別入院基本料として所定点数の70%に相当する点数を算定できる
注2) 許可病床数が100床未満の病院で、夜間救急外来対応のため一時的に救急外来で勤務する間、当該病棟における夜勤看護職員数が2未満となった日で、なおかつ「年6日以内であること」「当該日が属する月が連続する2カ月以内であること」のいずれも該当する場合は「夜間看護体制特定日減算」として所定点数の5%を減算
注3) 退院が特定の時間帯(午前退院)に集中している医療機関や、入院日及び退院日が特定の日(金曜入院・月曜退院)に集中している医療機関として別に定める医療機関は、所定点数の92%で算定
注4) 90日を超えて入院する患者については、①一般病棟入院基本料を算定(平均在院日数の算定の対象)、②療養病棟入院料1の点数を算定(平均在院日数の算定の対象外)―のいずれかを選択する。この場合、病棟ごとに①と②の選択が可能だが、②により算定する場合については、あらかじめ地方厚生局に届出が必要
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度
急性期一般入院基本料において、各入院料における実績評価の主な指標として用いられているのが「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」です。ⅠとⅡの2種類がありますが、Ⅱは診療実績データを用いて評価する方法です。所定の評価票や評価基準を用いて入院患者を評価し、次の基準を満たす場合が「重症度、医療・看護必要度の基準に該当する患者」となります。
【「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の基準に該当する患者】
- A得点(モニタリング及び処置等)が2点以上かつB得点(患者の状況等)が3点以上
- A得点が3点以上
- C得点(手術等の医学的状況)が1点以上
今回の改定では、A項目(モニタリング及び処置等)について、①「心電図モニターの管理」が削除、②「点滴ライン同時3本以上の管理」が「注射薬剤3種類以上の管理」に変更、③「輸血や血液製剤の管理」が「1点」から「2点」に変更―などの見直しが実施されました。
【一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目(モニタリング及び処置等)の評価票】
0点 | 1点 | 2点 | |
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1
創傷処置
①
創傷の処置(褥瘡の処置を除く)、
②
褥瘡の処置
|
なし | あり | ― |
2
呼吸ケア(喀痰吸引のみの場合を除く)
|
なし | あり | ― |
3
注射薬剤3種類以上の管理
|
なし | あり | ― |
4
シリンジポンプの管理
|
なし | あり | ― |
5
輸血や血液製剤の管理
|
なし | ― | あり |
6
専門的な治療・処置
①
抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)
②
抗悪性腫瘍剤の内服の管理
③
麻薬の使用(注射剤のみ)
④
麻薬の内服、貼付、坐剤の管理
⑤
放射線治療
⑥
免疫抑制剤の管理(注射剤のみ)
⑦
昇圧剤の使用(注射剤のみ)
⑧
抗不整脈剤の使用(注射剤のみ)
⑨
抗血栓塞栓薬の持続点滴の使用
⑩
ドレナージの管理
⑪
無菌治療室での治療
|
なし | ― | あり |
7
Ⅰ:
救急搬送後の入院(5日間)
Ⅱ:
緊急に入院を必要とする状態(5日間)
|
なし | ― | あり |
地域一般入院基本料
看護職員配置が13対1か15対1の一般病棟が算定する入院基本料です。今回の改定では、新たに「データ提出加算の届出」が要件化されています(経過措置あり〔下表の※1参照〕)。
区分 | 地域一般 入院料1 |
地域一般 入院料2 |
地域一般 入院料3 |
特別入院 基本料 |
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基本点数(1日につき) | 1,159点 | 1,153点 | 988点 | 607点 |
看護職員 | 13対1以上 | 15対1以上 | ||
看護師比率 | 70%以上 | 40%以上 | ||
平均在院日数 | 24日以内 | 60日以内 | ||
重症度、医療・看護必要度 | 測定している | ― | ― | |
データ提出加算※1 | 要 | |||
初期加算(1日につき) | 14日以内 +450点 | 同+300点 | ||
15日~30日 +192点 | 同+155点 | |||
重症児(者)受入連携加算 | +2,000点(入院初日) | ― | ||
救急・在宅等支援病床初期加算 (1日につき) |
+150点(14日限度) | ― |
※1: 2022年3月末時点での届出病院のうち、許可病床200床以上の病院は2023年3月末まで、許可病床200床未満の病院は2024年3月末までの経過措置。ただし、データ提出加算の届出を行うことが困難であることについて正当な理由があり、所定の要件を満たす場合は、当分の間、データ提出加算に係る要件を満たしているものとみなす
注) 算定可能な入院基本料等加算については、急性期一般入院基本料の点数等一覧表を参照(ただし、急性期充実体制加算、急性期看護補助体制加算、看護職員夜間配置加算、術後疼痛管理チーム加算、せん妄ハイリスク患者ケア加算、地域医療体制確保加算は算定不可。また、同表中の加算とは別に看護配置加算〔入院料3のみ〕と看護補助加算が算定可)。各種の減算規定、入院期間が90日を超える患者の扱い等は同表の注1~4を参照