診療報酬はやわかりマニュアル

2022年度 診療報酬改定 新型コロナウイルス感染症に対応しつつ医療提供体制の改革も手を緩めず

重点課題に「新型コロナウイルス感染症への対応」と「医師等の働き方改革の推進」

2022年度診療報酬改定(以下、今回の改定)では、「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」「安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進」の2つが重点課題として掲げられました。

新型コロナウイルスの感染者が2020年1月に国内で初めて確認されて以来、全国的に感染が拡大した同感染症は、2年以上が経過した現在でも収束しておらず、感染症対策の重要性を再認識させるとともに、日本の医療提供体制におけるさまざまな課題を浮き彫りにしました。

今回の改定ではこれを踏まえ、入院料の加算であった「感染防止対策加算」を「感染対策向上加算」に改称するとともに、算定要件や評価なども大幅に見直して感染対策の充実を図りました。さらに「外来感染対策向上加算」を新設し、外来医療を担う診療所においても感染対策の充実を求めました。この2つの加算のポイントは、感染対策に関する情報共有や訓練の共同実施、基幹的医療機関からの指導・助言を受けることなどが要件化され、診療所などと感染対策の基幹となる医療機関が密に連携し、地域で一体となった感染対策の推進が求められたことです。

また、もう一つの重点課題である医師等の働き方改革の推進については、前回改定で新設された「地域医療体制確保加算」が見直され、対象医療機関の拡大・評価の引き上げや、「医師労働時間短縮計画の作成」が要件に追加されるなどの変更が行われました。この他、「医師事務作業補助体制加算」の拡充や「病棟薬剤業務実施加算」の対象拡大なども実施されており、医師の時間外労働の規制が始まる2024年度を間近に控え、より実効性のある負担軽減策や労働時間短縮策を進めていく姿勢がうかがえます。

さらに、看護職員の負担軽減についても、夜間配置加算や看護補助者関連の各種加算の見直し・拡充が図られるなど、必要な対応が取られました。

入院は看護必要度や地域包括ケア病棟などを大きく見直し外来は引き続き機能分化と連携、かかりつけ医機能の評価がポイントに

このように、感染症対策や働き方改革に力が入れられた一方で、少子高齢化による人口構造や疾病構造の変化、医療資源の偏在や地域格差といった中長期的な課題は変わっておらず、医療提供体制の効率化と質の向上は、これまで通り手を緩めずに進めていく姿勢も示されました。

入院病床の再編に向けては、前回改定に引き続き「重症度、医療・看護必要度」が見直され、急性期一般入院料1(旧7対1)の絞り込みが強化されました。さらに、手術や救急医療などの高度かつ専門的な急性期医療体制を評価した「急性期充実体制加算」が新設され、総合入院体制加算以上の高い点数が設定されたことは、急性期病院にとって大きなインパクトとなったでしょう。

地域包括ケア病棟については、自院転棟患者の割合や在宅復帰率、在宅医療等の実績に応じた減算が強化されるなど非常に厳しい改定となりました。「急性期からの患者の受け入れ」「在宅等の患者の緊急時の受け入れ」「在宅復帰支援」という3つの役割に立ち返り、改めて地域包括ケア病棟の位置づけが明確化された形です。

回復期リハビリテーション病棟についても、重症患者へのリハビリ提供を重視した見直しが実施されるなど、入院病床の機能分化や再編をいっそう推進していく方向性が示されました。

外来医療については、「紹介受診重点医療機関」の創設を踏まえ、大病院における紹介状のない患者に対する定額負担の見直しや対象の拡大、紹介率等が低い大病院における減算規定の見直しなどが行われ、外来の機能分化をいっそう推進する改定内容となりました。

また、かかりつけ医機能の強化も前回改定から続くポイントです。地域包括診療料等の対象疾患に慢性心不全や慢性腎臓病が追加されたほか、前回改定で新設された「診療情報提供料(Ⅲ)」は「連携強化診療情報提供料」に改称された上で、算定回数の引き上げや対象となる連携形態の追加などが行われました。一方で、「機能強化加算」は要件が厳格化されました。

この他、▽ICTの利活用・デジタル化への対応(オンライン診療の見直し、「電子的保健医療情報活用加算」の新設等)▽質の高い在宅医療の確保(「外来在宅共同指導料」の新設、在支診・在支病の見直し等)▽後発医薬品・バイオ後続品の使用促進▽リフィル処方箋の導入―など幅広い範囲で見直しが実施された改定となりました。

2022年10月改定にて、電子的保健医療情報活用加算は廃止されました。
詳しくは下記のリンクよりご確認ください。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

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