DPC包括評価の留意事項
同一傷病等での再入院の取り扱い
DPC算定病棟等に入院していた患者(地域包括ケア病棟入院料1~4算定病棟・地域包括ケア入院医療管理料1~4算定病床で、診断群分類点数を算定する患者含む)が、退院日の翌日(転棟の場合は転棟日)から7日以内に、DPC算定病棟等〔地域包括ケア病棟入院料1~4算定病棟・地域包括ケア入院医療管理料1~4算定病床(一般病棟のみ)含む〕に再入院(特別の関係にある病院への再入院含む)・再転棟(以下、再入院)した場合、下記に該当するものは、前回入院と一連の入院と見なされ、再入院の入院期間の起算日は初回入院日となります。この場合、DPC算定病棟以外への転棟期間は入院期間に算入しますが、退院期間は入院期間には算入しません。
- ①前回入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」と再入院時の「入院の契機となった傷病名」の診断群分類の上2桁が同一
- ②前回入院時と再入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」の診断群分類の上6桁が同一
- ③再入院時の「入院の契機となった傷病名」に、定義テーブルで診断群分類ごとに定める「医療資源を最も投入した傷病名」欄に掲げるICDコード以外のICDコードを選択
- ④再入院時の「入院の契機となった傷病名」に、「180040手術・処置等の合併症」に定義されるICDコードを選択
* 前回入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」と再入院時の「入院の契機となった傷病名」の診断群分類の上2桁が異なり一連の入院に該当しないが、前回入院時と再入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」の診断群分類の上2桁が同一の場合は、再入院時の「入院の契機となった傷病名」に係る治療内容と経過について、レセプトの摘要欄に記載すること
ただし、予定再入院であり、再入院時の「医療資源を最も投入した傷病名」が悪性腫瘍で、かつ、化学療法の診断群分類区分に該当する患者は、この規定の適用除外となり、一連の入院とは見なされません(再転棟の場合は適用)。この場合、化学療法の実施日(予定日)とレジメンを含む化学療法の概要をレセプトの摘要欄に記載します。
なお、同一傷病等で7日以内に再入院した場合の特定入院料については、前回入院と一連の入院と見なした日数が算定限度となります。
再入院時の入院基本料等加算等の取り扱い
上記(同一傷病等での再入院の取り扱い)の規定に基づくとDPCでは一連の入院に該当しなくても、医科点数表の入院料等の通則では一連の入院に該当する場合があります。この場合、入院中に1回のみの算定とされている入院基本料等加算及び医学管理料等は、医科点数表の通則に従って算定します。
つまり、入院中に1回のみの算定とされている入院基本料等加算等は、上記の規定で一連の入院に該当しなくても、下記の①②の場合を除き、再入院時は算定不可となります。
- ①退院後、いったん治癒又は治癒に近い状態となり、その後再発して自院又は自院と特別の関係にある医療機関に入院した場合
- ②退院日から3カ月以上(悪性腫瘍、指定難病、特定疾患治療研究事業の対象疾患の罹患患者は1カ月以上)の期間、診断群分類区分の上6桁が同一の場合について、いずれの医療機関にも入院することなく経過した後に、自院又は自院と特別の関係にある医療機関に入院した場合
【再入院時に算定不可となる入院基本料等加算等(上記①②の場合除く)】
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入院基本料等加算急性期充実体制加算/臨床研修病院入院診療加算/救急医療管理加算/超急性期脳卒中加算/妊産婦緊急搬送入院加算/在宅患者緊急入院診療加算/超重症児(者)入院診療加算・準超重症児(者)入院診療加算/依存症入院医療管理加算/がん拠点病院加算/患者サポート体制充実加算/ハイリスク妊娠管理加算/ハイリスク分娩等管理加算(1のみ)/バイオ後続品使用体制加算/入退院支援加算(1除く)/医療的ケア児(者)入院前支援加算/せん妄ハイリスク患者ケア加算/協力対象施設入所者入院加算
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医学管理料等退院時共同指導料1/退院時共同指導料2/退院時リハビリテーション指導料/栄養情報連携料/退院時薬剤情報管理指導料/精神科退院時共同指導料
退院時処方の取り扱い
DPC包括評価の対象患者に対し、退院後に在宅(介護老人福祉施設への入所含む)で使用する薬剤を退院時処方した場合は、薬剤料のみ出来高算定できます。
ただし、当該処方は、診断群分類区分を決定する際、投入した医療資源に含めることはできません。
持参薬の取り扱い
入院中に使用する薬剤は、入院中の処方が原則とされています。従って予定入院において、入院の契機となる傷病の治療に使用する薬剤を患者に持参させることは、特別な理由がない限り認められません。
特別な理由については、単に病院や医師等の方針ではなく、患者の状態等に応じた個別具体的な理由であることが必要とされています。やむを得ず持参薬を使用する場合は、その理由を診療録に記載します。
地域包括ケア病棟入院料算定病棟への転棟の場合の取り扱い
DPC算定病棟等から地域包括ケア病棟入院料1~4算定病棟(一般病棟のみ)に転棟した場合、入院日Ⅱまでは引き続き診断群分類点数表で算定します。転棟日が入院日Ⅱを超えている場合は、転棟日から医科点数表で算定します。
また、DPC算定病棟等の入院患者が退院翌日から起算して7日以内に地域包括ケア病棟入院料1~4算定病棟に再入院(転棟)し、前回入院と一連の入院に該当する場合も、入院日Ⅱまでは前回入院時と同じ診断群分類区分により算定し、「入院の契機となった傷病名」の診断群分類をレセプトの摘要欄に記載します。
前回入院と一連の入院に該当しない場合は、再入院(転棟)時の「入院の契機となった傷病名」に係る治療内容と経過をレセプトの摘要欄に記載します。
地域包括ケア入院医療管理料算定病室への転室の場合の取り扱い
DPC算定病棟等から地域包括ケア入院医療管理料1~4算定病室(一般病棟のみ)に転室した場合、入院日Ⅲまでは引き続き診断群分類点数表で算定します。
また、DPC算定病棟等の入院患者が退院翌日から起算して7日以内に地域包括ケア入院医療管理料1~4算定病室に再入院(転室)し、前回入院と一連の入院に該当する場合も、前回入院時と同じ診断群分類区分により引き続き算定し、「入院の契機となった傷病名」の診断群分類をレセプトの摘要欄に記載します。
前回入院と一連の入院に該当しない場合は、再入院(転室)時の「入院の契機となった傷病名」に係る治療内容と経過をレセプトの摘要欄に記載します。
外泊期間中の取り扱い
入院料等の算定
外泊期間中は、患者の入院病棟が届け出ている入院基本料の基本点数の15%又は特定入院料の15%を算定します。地域包括ケア病棟入院料1~4算定病棟・地域包括ケア入院医療管理料1~4算定病床で、診断群分類点数を算定する患者については、一般病棟の入院基本料の基本点数の15%を算定します。
ただし、精神及び行動の障害のある患者が治療目的で外泊する場合は、連続3日以内、かつ、月(同一暦月)6日以内に限り、入院基本料等の30%を算定できます。
加えて、在宅医療に備えて外泊する際に、在宅医療に関する指導管理を行った場合は、退院前在宅療養指導管理料も算定可能です(外泊初日に1回のみ)。
入院期間の計算
診断群分類点数表等による算定の際には、外泊期間も入院期間に算入します。
コーディングに関する注意点
コーディングテキストの活用
厚生労働省作成の「DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト」は、コーディングの基本的な考え方やコーディングを適切に行うための望ましい病院の体制等を周知することを目的としており、コーディングの際の注意点等がまとめられています。DPC病院に義務付けられているコーディング委員会(参照)の開催時には、このテキストの活用が望ましいとされています。
なお、2024年6月付で改定版(第6版)が公表されています。
DICによる請求時の対応
「120290産科播種性血管内凝固症候群」又は「130100播種性血管内凝固症候群」(以下、DIC)で請求する際は、下記の内容をレセプトの摘要欄に記載します。
- DICの原因と考えられる基礎疾患
- 厚生労働省DIC基準によるDICスコア又は急性期DIC診断基準(日本救急医学会DIC特別委員会)によるDICスコア
- 入院期間中に実施した治療内容(DIC及びDICの原因と考えられる基礎疾患に対する治療内容含む)及び検査値等の推移
入院日Ⅲを超えた場合の取り扱い
化学療法等の実施
入院日Ⅲを超えた日以降は医科点数表で算定しますが、下記に該当する診断群分類区分の患者に入院日Ⅲを超えて初めて化学療法等を実施した場合は、入院日Ⅲを超えても、抗悪性腫瘍剤等の薬剤料及び当該薬剤に関する医科点数表第2章第5部投薬、第6部注射(無菌製剤処理料除く)の費用は、出来高算定できません。
- ①悪性腫瘍患者に対する化学療法に係る診断群分類区分(「化学療法あり」の診断群分類区分含む)
- ②①以外で、特定の薬剤名(成分名)を含む診断群分類区分(悪性腫瘍以外の患者含む)
上記の場合に算定できない薬剤料とは、①については悪性腫瘍に対する抗腫瘍用薬、ホルモン療法・免疫療法等の抗腫瘍効果を有する薬剤、②については明示された薬剤(明示薬剤以外の薬剤と併用することが医学的に明らかな場合は併用薬剤も含む)――に係る薬剤料です。これらに該当しない薬剤料(例:糖尿病に係る薬剤料)は出来高算定できます。
なお、入院日Ⅲまでに化学療法等を実施した場合は、入院日Ⅲを超えて投与した抗悪性腫瘍剤等の薬剤料は出来高算定できます。
手術の実施
入院日Ⅲを超えて手術を実施した場合でも、ツリー図の分岐は「手術あり」を選択します。
入院患者の対診・他医療機関受診の取り扱い
DPC対象病院に入院中の患者に対して対診が行われた場合、又は入院中の患者が他医療機関を受診した場合の費用については、対象病院の医師が診療した場合と同様に扱い、対象病院で算定します。
具体的には、DPCの包括範囲の診療を他医療機関で実施した場合も出来高算定はできず、費用は対象病院と他医療機関との合議により分配します。一方、包括範囲外の診療であれば、対象病院で出来高算定し、対象病院と他医療機関との合議により分配します。ただし、対診が行われた場合の初・再診料及び往診料は、対診を行った医療機関で算定できます。
なお、対象病院は、他医療機関が実施した診療行為を含めて当該患者の診断群分類区分を決定します。
DPCの請求方法
DPCも医科点数表による算定と同様に毎月請求を行いますが、診断群分類点数表で算定する場合は、診断群分類番号等の記載欄のあるDPC専用のレセプトを使用します。
請求については、入院当初は診断群分類点数表で算定していた患者が、診断群分類区分の変更等の理由で退院時に包括対象外となり、医科点数表で算定することになった場合等、入院期間内の請求方法が複数存在する場合は、退院(DPC算定病棟等以外への転棟含む)時に決定した方法で行います。つまり、DPC算定病棟に入院した患者への請求は、診断群分類点数表による算定又は医科点数表による算定のいずれかで統一します。
ただし、入院日Ⅲを超えて医科点数表で算定する場合は、診断群分類点数表による算定の一部であるため、統一された請求方法と見なされます。
なお、診断群分類点数表による算定において、入院当初と退院・転棟時等の診断群分類区分が異なる場合は、退院・転棟月等の費用を算定する際に差額を調整します(下図)。
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入院中に新たに高額薬剤として告示された薬剤を投与する場合、どの時点から包括対象外となるのか?
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患者の退院時に決定した請求方法で統一するため、投与時点で高額薬剤として告示されている場合は、入院期間全てを医科点数表で算定します。