2024年度DPC制度の見直し
改定の概要
ここ数回の改定で課題となっていた、平均的な診療実態から大きく外れるDPC対象病院の対応について、対象病院の基準の見直しという形で一定の結論が出されました。
厚生労働省が設置しているDPC/PDPS等作業グループの分析によると、対象病院が提出するDPC算定病床の退院患者データ数が1カ月当たり90を下回る病院は、診療密度が相対的に低いことが分かりました。そこで、対象病院の基準に提出データ数が追加され、次回改定から制度への参加・退出の判定に使用されることになりました。今改定では、データ数が少ない病院のデータは除外して包括点数が設定され、基礎係数も区別されました。
対象病院の基準については、これまで保険診療係数で基準を満たさない場合に減算となっていた適切なDPCデータの作成に関する3項目も追加されました。背景には、ほとんどの病院が基準を満たしていることがあります。
主な見直し内容
医科診療報酬点数表(以下、医科点数表)の改定内容に関連した見直しの他、下記の見直しが行われました。
対象病院の基準
- 対象病院の基準に「調査期間1カ月当たりのデータ数が90以上」及び保険診療係数で評価されてきた「適切なデータ作成」の項目が追加されました(参照)。
診断群分類
-
医療資源の同等性、臨床的類似性等の観点から、診断群分類及び診断群分類ごとの点数が見直されました。
点数設定
医療機関別係数
- 基礎係数の設定は、これまでの考え方が維持されましたが、調査期間1カ月当たりのデータ数が90未満の病院の係数は別に設定されました(参照)。
- 機能評価係数Ⅰは、医科点数表の見直しが反映され、新設の薬剤業務向上加算(病棟薬剤業務実施加算)等が係数化されました。一方で、既存の看護補助体制充実加算(急性期看護補助体制加算)等の係数は廃止されました(参照)。
-
機能評価係数Ⅱは、保険診療係数、効率性係数、救急医療係数、地域医療係数が見直されました。
保険診療係数については廃止され、①適切なDPCデータ作成に対する評価を対象病院の基準に移行、②病院情報の公表に対する評価を体制評価指数による評価に移行――が行われました。
効率性係数については、医療機関群ごとの評価となり、評価手法が変更されました。
救急医療係数は、他の係数と評価の趣旨が異なることを踏まえ、医療機関別係数の独立した係数に位置付けられたとともに、名称も「救急補正係数」に改められました。ただし、評価手法は従来通りです。
地域医療係数については、体制評価指数と定量評価指数の評価シェアが「7:5」に見直されました。
体制評価指数は、社会や地域の実情に応じて求められている機能の評価という観点から、評価項目に「臓器提供の実施」「医療の質向上に向けた取り組み」「医師少数地域への医師派遣機能(大学病院本院群のみ)」が追加されました。項目追加に伴い、ポイントの上限値も見直されています。この他、既存項目の「感染症」の評価内容についても、改正感染症法で都道府県と医療機関が感染症対応に係る協定を締結する仕組みが法定化され、第8次医療計画(2024〜2029年度)で協定締結等を通じた感染症医療等の提供体制の確保を図るとされたことを踏まえた見直しが行われました(参照)。
算定ルール
- 抗TFPIモノクローナル抗体について、改定前は先天性血友病患者に使用する場合に高額薬剤判定が適用されていましたが、血液凝固因子製剤と同様に血友病患者における出血傾向の抑制を目的とした効能・効果を有することから、包括対象外薬剤に追加されました(参照)。