DPCはやわかりマニュアル

医療機関別係数
係数の種類と基礎係数

医療機関別係数

DPC対象病院の包括点数は、1日当たり包括点数に入院日数と医療機関別係数を乗じて算出します。

医療機関別係数は、①基礎係数、②機能評価係数Ⅰ、③機能評価係数Ⅱ、④激変緩和係数――の4種類を合算したものになりますが、このうち、④激変緩和係数は、診療報酬改定時に推計診療報酬変動率が±2%を超えて変動する対象病院に対し、改定年度の1年間のみ設定されます。新たに対象病院となる病院については、マイナス緩和措置の対象となった場合に限り設定されます。それぞれの係数の具体的な役割や設定方法は下表の通りです。

なお、基礎係数と機能評価係数Ⅱは後述の通り、診療実績に基づき設定される係数で、2022年度は通常であれば2020年10月~2021年9月の診療実績データが使用されるところでしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、感染症患者等の受け入れ医療機関等に該当する期間のデータを使用しない方法で算出した場合と通常通り算出した場合を比較して、高い方を採用するなどの臨時的な取り扱いがなされています。

【医療機関別係数の種類と役割】
種類 役割
基礎係数 医療機関の基本的な診療機能を評価した係数
機能評価係数Ⅰ 医療機関の人員配置や医療機関全体として有する体制等、構造的因子を評価した係数(出来高点数を係数化)(参照
機能評価係数Ⅱ DPC参加による医療提供体制全体としての効率改善等への取り組みを評価した係数(医療機関が担うべき役割や機能等に対するインセンティブ)(参照
激変緩和係数 診療報酬改定に伴う推計診療報酬変動率(出来高部分含む)が±2%を超えないよう補正する係数(診療報酬改定のない年度の係数は0)。推計診療報酬変動率が±2%を超える病院にのみ設定
新たな対象病院については、診療報酬改定前の実績より-2%を超えた場合、あらためて当該病院の出来高算定実績に代えて当該病院が所属する医療機関群の平均的な医療機関別係数の値を用いて推計診療報酬変動率(補正診療報酬変動率)を算出し、その結果が-2%を超えて変動する場合のみ設定

基礎係数

機能評価係数では評価できない医療機関の基本的な診療機能を評価した係数です。施設特性を反映させるため、対象病院を3つに分類した医療機関群ごとに設定されており、包括範囲に係る出来高報酬相当の平均値が係数化されています。

基礎係数=〔各医療機関群の包括範囲出来高点数の平均値〕×〔改定率〕÷〔各医療機関群の診断群分類点数表に基づく包括点数の平均値〕

医療機関群

対象病院は、各病院の施設特性に応じて、①大学病院本院群、②DPC特定病院群、③DPC標準病院群―の3つの医療機関群に分類されます。

医療機関別係数のうち、基礎係数と機能評価係数Ⅱの保険診療係数、複雑性係数、カバー率係数、地域医療係数は、医療機関群ごとに評価が行われます(参照)。

2022年度改定における医療機関群別の施設数と基礎係数は下表の通りです。

【2022年度改定の医療機関群別施設数と基礎係数】
医療機関群 施設数 基礎係数
大学病院本院群 82 1.1249
DPC特定病院群 181 1.0680
DPC標準病院群 1,501 1.0395

【DPC特定病院群】

4つの実績要件(下表)が設定されており、それぞれの実績が大学病院本院群の最低値(外れ値除く)より高い病院が指定されます。

医療機関別係数はいつ変更されるのか?

基礎係数は診療報酬改定時、機能評価係数Ⅰは各病院の施設基準の届出変更時、機能評価係数Ⅱは毎年4月1日に変更されます。

〈DPC特定病院群の実績要件〉
【実績要件1】診療密度
1日当たり包括範囲出来高平均点数(全病院患者構成、後発医薬品により補正:外的要因補正)
  • 当該病院で症例数が一定以上(1症例/月)の診断群分類に該当する患者について、当該病院が全DPC対象病院の平均的な患者構成と同様の患者群に対して診療を行ったと仮定した場合の、1日当たり包括範囲出来高実績点数を算出
  • 当該病院の入院で使用される医薬品のうち、後発医薬品がある先発医薬品については、薬価基準収載医薬品コード9桁が一致する後発医薬品の薬価最低値に置き換えた場合の、1日当たり包括範囲出来高実績点数を算出
【実績要件2】医師研修の実施
届出病床1床当たり臨床研修医師の採用数(基幹型臨床研修病院の免許取得後2年目まで)
  • 各病院が厚生労働省に報告している臨床研修医師の採用数と許可病床数により算出
    特定機能病院は実績要件を満たしたものとして取り扱う
【実績要件3】医療技術の実施
次の6項目のうち5項目以上を満たす
≪外科系(外保連試案第9.3版)≫
  • (3a):
    手術実施症例1件当たりの外保連手術指数(外科医師数及び手術時間補正後)
    • 当該病院のDPC算定病床の全患者総計の外保連手術指数(下記参照)を(3c)で除して算出
  • (3b):
    DPC算定病床当たりの外保連手術指数(外科医師数及び手術時間補正後)
    • 当該病院のDPC算定病床の全患者総計の外保連手術指数をDPC算定病床数で除して算出
  • (3c):
    手術実施症例件数
    • 外保連試案で技術難易度が設定されている手術の実施症例が対象。点数設定から同等の技術と考えられるものも集計対象
≪内科系(特定内科診療2014年度版)≫(下記参照)
  • (3A):
    症例割合
    • 特定内科診療の対象症例数をDPC算定病床の全患者総計で除して算出
  • (3B):
    DPC算定病床当たりの症例件数
    • 特定内科診療の対象症例数をDPC算定病床数で除して算出
  • (3C):
    対象症例件数
    • 特定内科診療の対象DPCコードと条件に一致する症例が対象
【実績要件4】補正複雑性指数(DPC補正後)
  • 全DPC対象病院データの平均在院日数より長い平均在院日数を持つDPCで、かつ、1日当たり包括範囲出来高実績点数が平均値より高いDPCを抽出し、これらのDPCについて複雑性指数を算出
  1. *1:
    各要件の基準値は、大学病院の最低値(外れ値除く)。
  2. *2:
    各病院の基準値は、診療報酬改定に使用する実績(2020年10月~2021年9月の診療内容及び診断群分類)に基づき設定。ただし、新型コロナウイルス感染症に係る臨時的な取り扱いを実施。

外保連手術指数の算出方法

  • 指数の集計において、様式1に記載された手術のうち、複数の記載がある場合については、最も高い指数に基づき評価
  • 指数は、外保連試案(第9.3版)に記載されている外科医師数を含めた時間当たり人件費の相対値(下表参照。難易度B、外科医師数1人を1としてそれぞれ相対化)に手術時間数を加味して各手術に重み付けし、集計対象手術それぞれに合算して算出
  • 難易度、外科医師数、手術時間数はいずれも外保連試案の規定を採用
    • 外保連試案と結び付けられなかったKコードの手術については、医科点数表の点数設定を参考に、類似手術が存在する場合には同じ難易度を付与。それ以外は集計の対象外
    • 1つのKコードに複数の外保連試案コードが対応する場合は、外科医師数を最も重視する形で指数を算出。
      具体的には、①外科医師数、②難易度、③手術時間数——の順で対応する手術を1つに絞り、対応関係を作成
    • 内視鏡試案における評価は「手技技術度」「協力医師数+1」「施行時間」
外科医師数
7 6 5 4 3 2 1
難易度 E 13.49 13.22 12.95 12.68 11.68 9.37 5.62
D 8.14 7.87 7.60 7.32 7.05 6.05 3.75
C     4.12 3.85 3.58 3.30 2.30
B       1.82 1.54 1.27 1.00

【例】難易度D、外科医師数3、手術時間数3の手術の場合は、7.05 × 3 = 21.15

(中医協総会 2022年2月9日資料より)

【DPC算定の仕組みと医療機関別係数】

DPC算定の仕組みと医療機関別係数
〈特定内科診療〉
疾患名 対象DPCコードと条件 ポイント
重症脳卒中(JCS30以上) 010040×199×$××(入院時JCS30以上)(DPC外含)
010060×199$$$$(入院時JCS30以上)
010060×399$$$$(入院時JCS30以上)
出血と梗塞
JCS30以上
髄膜炎・脳炎 010080××99×$×$
(入院時JCS100以上、もしくは処置2ありのうちJ045$人工呼吸あり)
処置2(人工呼吸)
重症筋無力症クリーゼ 010130××99×$××(処置2あり/なし)(ICD G700のみ)(DPC外含) 診断名(ICD-10)で判断
てんかん重積状態 010230××99×$$×(処置2・副傷病あり/なし)(ICD G41$のみ) 診断名(ICD-10)で判断
気管支喘息重症発作 040100×××××$$×(処置2あり)(J045$人工呼吸)
(ICD J46$、J45$のみ)
処置2(人工呼吸)
間質性肺炎 040110×××××$××(処置2あり)(J045$人工呼吸)(ICD絞りなし) 処置2(人工呼吸)
COPD急性増悪 040120××99$1$×(処置2あり)(J045$人工呼吸)(DPC外含) 処置2(人工呼吸)
急性呼吸窮<促>迫症候群、ARDS 040250××99×1××(処置2あり)(PGI2ありの場合、J045$人工呼吸があれば可) 処置2(人工呼吸)
急性心筋梗塞 050030××975$$×(処置15あり)(ICD I21$のみ) Kコードあり
急性心不全 050130××99$$××(処置2あり、E101SPECT・E100$シンチグラム・G005中心静脈注射のみ除く)
050130××975$××(処置15あり)
人工呼吸又は緊急透析
Kコードあり
解離性大動脈瘤 050161××99$$××(処置2あり、G005中心静脈注射のみ除く)(DPC外含) 処置2(人工呼吸・緊急透析)
肺塞栓症 050190××975×××(処置15あり)(ICD I822除く)
050190××99×$××(処置2あり、G005中心静脈注射のみ除く)
(ICD I822除く)
処置2(人工呼吸・緊急透析)
Kコードあり
劇症肝炎 060270××$$×$××(手術あり/なし)(処置2あり、G005中心静脈注射のみ除く)(ICD絞りなし) 処置2(人工呼吸、PMX等)
重症急性膵炎 060350××$$$1×$(手術あり/なし)(処置2あり、G005中心静脈注射のみ除く)(ICD K85$のみ)(DPC外含) 処置2(人工呼吸、CHDF等)
糖尿病性ケトアシドーシス 100040(DPC6桁全て) 診断名あれば全て
甲状腺クリーゼ 100140××99×$$×(処置2あり/なし)(ICD E055のみ) 診断名と手術なし
副腎クリーゼ 100202××××××××(ICD E272のみ) 診断名あれば全て
難治性ネフローゼ症候群 110260××99×$××(処置2あり/なし)(D412経皮的針生検又はD412-2経皮的腎生検法のいずれか一方が必須)(DPC外含) 診断名、腎生検
急速進行性糸球体腎炎 110270××99×$××(処置2あり/なし)(D412経皮的針生検又はD412-2経皮的腎生検法のいずれか一方が必須)(DPC外含) 診断名、腎生検
急性白血病 130010××99×$××(化学療法あり)(ICD C910、C920、C950のみ)
130010××97×$××(化学療法あり)(ICD C910、C920、C950のみ)
化学療法、実症例数
悪性リンパ腫 130020××$$×$××(化学療法あり)(ICD絞りなし)(DPC外含)
130030××99×$××(化学療法あり)(ICD絞りなし)
130030××97×$$×(化学療法あり)(ICD絞りなし)(DPC外含)
化学療法、実症例数
再生不良性貧血 130080(DPC6桁全て)(ICD絞りなし) 実症例数
頸椎頸髄損傷 160870(DPC6桁全て)(リハビリ実施必須)(ICD絞りなし) リハビリ
薬物中毒 161070(処置2あり、G005中心静脈注射のみ除く)(ICD絞りなし)(DPC外含) 処置2(人工呼吸、PMX等)
敗血症性ショック 180010×$×××3××(処置23あり)(ICD絞りなし)(DPC外含) 処置23(PMX、CHDF)

(中医協総会 2022年2月9日資料より)

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。

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