A.
肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。レミケードを含む抗TNF製剤が投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。なお、これらの報告の多くは、他の免疫抑制作用をもつ薬剤を併用投与した患者に起きています1)。
B型肝炎ウイルスキャリア患者への投与にあたっては、肝臓学会肝臓専門医にご相談いただき、日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」(2022年6月)2)および日本リウマチ学会による「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」(平成26年4月23日改訂)3)に沿ったHBV-DNAの定量や核酸アナログ製剤の投与などの対処をお願いします。
◆B型肝炎ウイルスキャリアの患者に投与した症例について
予防的に核酸アナログ製剤を投与した症例や、TNF阻害薬の治療を開始し、再活性化の可能性が疑われてから核酸アナログ製剤で治療している症例もありますが、ほとんどが海外症例であり、リスクも高いため肝臓学会肝臓専門医との連携の上で治療することをお勧めします。
◆電子添文等の記載(抜粋)
◇レミケードの電子添文:
【禁忌】重篤な感染症(敗血症等)の患者
◇メトトレキサート製剤(関節リウマチの場合、併用必須)の電子添文:
【禁忌】慢性肝疾患のある患者
【重要な基本的注意】B型又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者に対し本剤を投与する場合、投与期間中及び投与終了後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型又はC型肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に注意すること。
◇関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害薬使用の手引き(2023年3月22日改訂版):
【投与禁忌】明らかな活動性を有している感染症を保有する患者においては、その種類に関係なく感染症の治療を優先し、感染症の治癒を確認後にTNF阻害薬の投与を行う。
【要注意事項】B型肝炎ウイルス感染者(キャリアおよび既往感染者)に対しては、日本リウマチ学会による「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」および日本肝臓学会「B型肝炎治療ガイドライン」を参考に対処する。
◇強直性脊椎炎(AS)に対するTNF阻害療法施行ガイドライン(2010年10月改訂版):
【投与禁忌】B型肝炎ウイルス感染者に対しては、TNF阻害薬投与に伴いウイルスの活性化および肝炎悪化が報告されており、投与すべきではない。
◇乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版):
【治療禁忌】B型肝炎ウイルス感染者に対しては、TNF阻害薬治療に伴いウイルスの活性化および肝炎悪化が報告されており、一般に生物学的製剤の使用は控えるべきである。
参考資料: |
1) |
電子化された添付文書 |
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2) |
B型肝炎治療ガイドライン(第4版)2022年6月 日本肝臓学会/肝炎診療ガイドライン作成委員会 編 |
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3) |
B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言/2014 |
[管理番号:11148]
※電子添文はこちらよりご覧いただけます