監修:平井 啓先生(大阪大学大学院人間科学研究科)
エビデンスがある治療法なのに患者さんに受け入れてもらえないなどの経験はありませんか?人はいつも合理的な意思決定ができるとは限りません。そこで役立つのが行動経済学。医療現場で役立つヒントをくれます。
行動経済学とは?
行動経済学とは、経済学と心理学を融合させて意思決定のメカニズムを解き明かす学問です。一般的な経済学では「人間は合理的で常に最適な行動をとる」ということを前提にしていますが、必ずしも合理的な意思決定ができているわけではありません。そこで、行動経済学では経済学に心理学を融合させ、実際に人が行うであろう非合理な意思決定のメカニズムを解明します。行動経済学的特性の一例としてサンクコスト・バイアスがあります。サンクコスト・バイアスとは、投資を中止したほうが合理的であるにもかかわらず、これまで投資した費用や労力を取り戻そうとして継続した結果、さらに浪費してしまう傾向のことです。具体例を挙げると、患者さんに新しい有効な治療法を勧めても、これまで行ってきた治療をやめるのはもったいないと感じて、変更を拒否するケースなどが考えられます。このように医療現場で起こる課題も行動経済学で分析することで、解決のヒントを得られます。