処置
処置は各処置料と、処置医療機器等加算、薬剤料、特定保険医療材料料で構成されています。
通則の加算として、時間外等加算(参照)が設定されていますが、今回の改定で「耳鼻咽喉科乳幼児処置加算」「耳鼻咽喉科小児抗菌薬適正使用支援加算」が新設されています。
耳鼻咽喉科乳幼児処置加算
60点(1日につき)
耳鼻咽喉科を標榜する医療機関において、耳鼻咽喉科の担当医師が6歳未満の乳幼児に対して、「耳鼻咽喉科処置」(J095~J115-2)(下記参照)を行った場合に加算できます。ただし、この場合は「耳垢栓塞除去(複雑なもの)」の乳幼児加算は算定できません。
耳鼻咽喉科小児抗菌薬適正使用支援加算
80点(月1回)
急性気道感染症、急性中耳炎又は急性副鼻腔炎により受診した基礎疾患のない6歳未満の乳幼児に対して「耳鼻咽喉科処置」(J095~J115-2)(下記参照)を行った場合で、診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められないため抗菌薬を使用しない者に対して、療養上必要な指導や処置の結果の説明を行い、文書により説明内容を提供した場合に算定できます。
次の施設基準が設定されていますが、基準を満たしていればよく、届出の必要はありません。
【主な施設基準】
- 病院の場合はデータ提出加算2の届出
- 耳鼻咽喉科を標榜している
- 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016年4月5日 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議)に位置づけられた「地域感染症対策ネットワーク(仮称)」に係る活動に参加し、又は感染症にかかる研修会等に定期的に参加している
耳鼻咽喉科処置
耳鼻咽喉科処置については、項目の新設はありませんでしたが、「耳処置」「鼻処置」「口腔、咽頭処置」が、それぞれ2点ずつ引き上げられました。
耳処置(耳浴及び耳洗浄を含む)
27点
鼻処置(鼻吸引、単純鼻出血及び鼻前庭の処置を含む)
16点
口腔、咽頭処置
16点
※いずれも入院中の患者以外が対象
鼓室処置(片側) | 55点 | |||
---|---|---|---|---|
耳管処置 (耳管通気法、鼓膜マッサージ及び鼻内処置を含む)※ |
カテーテルによる耳管通気法(片側) | 36点 | ||
ポリッツェル球による耳管通気法 | 24点 | |||
副鼻腔自然口開大処置 | 25点 | |||
扁桃処置 | 40点 | |||
間接喉頭鏡下喉頭処置(喉頭注入を含む)※ | 32点 | |||
副鼻腔手術後の処置(片側) | 45点 | |||
鼓室穿刺(片側) | 50点 | |||
上顎洞穿刺(片側) | 60点 | |||
扁桃周囲膿瘍穿刺(扁桃周囲炎を含む) | 180点 | |||
唾液腺管洗浄(片側) | 60点 | |||
副鼻腔洗浄又は吸引(注入を含む)(片側) | 副鼻腔炎治療用カテーテル | 55点 | ||
上記以外 | 25点 | |||
鼻出血止血法(ガーゼタンポン又はバルーンによるもの) | 240点 | |||
鼻咽腔止血法(ベロック止血法) | 440点 | |||
耳管ブジー法(通気法又は鼓膜マッサージの併施を含む)(片側) | 45点 | |||
唾液腺管ブジー法(片側) | 45点 | |||
耳垢栓塞除去(複雑なもの) | 片側 | 100点 | ||
両側 | 180点 | |||
乳幼児加算(6歳未満) | +55点 | |||
ネブライザ※ | 12点 | |||
超音波ネブライザ(1日につき) | 24点 | |||
排痰誘発法(1日につき) | 44点 |
※: 入院中の患者以外が対象
下肢創傷処置
1.足部(踵を除く)の浅い潰瘍
135点
2.足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍
147点
3.足部(踵を除く)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍
270点
1.足部(踵を除く)の浅い潰瘍 135点
2.足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍 147点
3.足部(踵を除く)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍 270点
新規技術の保険導入として新設された項目です。対象部位は足部、足趾又は踵で、潰瘍の深さが腱、筋、骨又は関節のいずれにも至らないものが「浅い潰瘍」、いずれかに至るものが「深い潰瘍」です。創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)及び穿刺排膿後薬液注入は併せて算定できません。また、複数の下肢創傷がある場合は主なもののみを算定します。
人工腎臓
人工腎臓は大きく「慢性維持透析の場合」と「その他の場合」に分けられますが、2020年度改定で慢性維持透析は、HIF-PH阻害剤の院外処方に対応した評価体系に再編されました。
今回の改定では、「HIF-PH阻害剤は院内処方を原則とする」という扱いに変わり、再び評価体系が変更されています(ただし、同一患者に対して、同一診療日にHIF-PH阻害剤のみを院内で投薬する場合は、他の薬剤を院外処方箋により投薬しても可)。
各区分の点数は次表のとおりですが、「慢性維持透析の場合」は透析液(灌流液)、血液凝固阻止剤、生理食塩水、エリスロポエチン製剤、ダルベポエチン製剤、エポエチンベータペゴル製剤及びHIF-PH阻害剤の費用が包括され、別に算定できません。
妊娠中以外の患者には、人工腎臓と持続緩徐式血液濾過を併せて月14回に限り算定できます。また、在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定患者は「腹膜灌流の1〔連続携行式腹膜灌流〕」の実施回数と併せて週1回に限り、在宅血液透析指導管理料の算定患者は週1回に限り算定できます。
【人工腎臓の点数(1日につき)】
慢性維持透析の場合 | 1 | 2 | 3 | |
---|---|---|---|---|
4時間未満 | 1,885点 | 1,845点 | 1,805点 | |
4時間以上5時間未満 | 2,045点 | 2,005点 | 1,960点 | |
5時間以上 | 2,180点 | 2,135点 | 2,090点 | |
その他の場合 | 1,580点 |
【「慢性維持透析の場合」の1と2の主な施設基準】
- 関連学会から示されている基準に基づき、水質管理が適切に実施されている
- 透析機器安全管理委員会を設置し、その責任者として専任の医師又は専任の臨床工学技士を1名以上配置
-
「1」は次のいずれかを満たす
- ①透析用監視装置の台数が26台未満
- ②透析用監視装置1台当たりの人工腎臓(慢性維持透析の場合)の算定患者数(外来患者に限る)の割合が3.5未満
-
「2」は次のいずれも満たす
- ①透析用監視装置の台数が26台以上
- ②透析用監視装置1台当たりの人工腎臓(慢性維持透析の場合)の算定患者数(外来患者に限る)の割合が3.5以上4.0未満
人工腎臓の加算としては次のものがありますが、今回の改定では、「透析時運動指導等加算」の新設、導入期加算の見直しなどが行われています。
透析時運動指導等加算
75点(90日限度)
人工腎臓を実施している患者に対して、医師、看護師、理学療法士又は作業療法士が、療養上必要な訓練等について指導を行った場合に算定できます。
【主な算定要件】
- 透析患者の運動指導に係る研修を受講した医師、理学療法士、作業療法士又は医師に具体的指示を受けた当該研修を受講した看護師が1回の血液透析中に、連続して20分以上患者の病状及び療養環境等を踏まえ療養上必要な指導等を実施した場合に算定できる
- 実施した指導等の内容を実施した医師本人又は指導等を実施した理学療法士等から報告を受けた医師が診療録に記録する
- 入院患者は、医師、理学療法士又は作業療法士の1人当たりの患者数は1回15人程度、看護師の1人当たりの患者数は1回5人程度を上限とし、入院患者以外は、それぞれ1回20人程度、1回8人程度を上限とする
- 指導等に当たっては、日本腎臓リハビリテーション学会「腎臓リハビリテーションガイドライン」等の関係学会によるガイドラインを参照する
- 指導を行う室内に心電図モニター、経皮的動脈血酸素飽和度を測定できる機器及び血圧計を指導に当たって必要な台数有している。また、同室内に救命に必要な器具及びエルゴメータを有していることが望ましい
- 加算の算定日は、疾患別リハビリテーション料は別に算定できない
導入期加算
(1日につき、1カ月限り)
導入期加算1
200点
導入期加算2
400点
導入期加算3
800点
導入期加算1 200点
導入期加算2 400点
導入期加算3 800点
人工腎臓の導入に当たって、腎代替療法についての患者への説明状況や腹膜透析及び腎移植の実績に応じて設定されているのが導入期加算です。
今回の改定では、慢性腎臓病患者に対する移植を含む腎代替療法に関する情報提供をさらに推進する観点から、要件や点数の見直しが行われるとともに、腎臓移植実施施設として日本臓器移植ネットワークに登録された施設を想定した「3」が新設されています。
【主な施設基準】
- ア.関連学会の作成した資料又はそれらを参考に作成した資料に基づき、患者ごとの適応に応じて、腎代替療法について、患者に対し十分な説明を行っている
- イ.腎代替療法に係る所定の研修の修了者が配置されていることが望ましい
- ア.「加算1」のアを満たしている
- イ.腎代替療法に係る所定の研修の修了者が配置されている
- ウ.研修の修了者が、「加算3」の算定施設が実施する腎代替療法に係る研修を定期的に受講している
- エ.在宅自己腹膜灌流指導管理料を過去1年間で24回以上算定している
- オ.腎移植について、患者の希望に応じて適切に相談に応じており、かつ、腎移植に向けた手続きを行った患者※2が前年に2人以上
- ア.「加算1」のア及び「加算2」のイを満たしている
- イ.腎臓移植実施施設として、日本臓器移植ネットワークに登録された施設であり、移植医と腎代替療法に係る所定の研修の修了者が連携して診療を行っている
- ウ.「加算1」又は「加算2」の算定施設と連携して、腎代替療法の研修を実施し、必要に応じて、当該連携施設に対して移植医療等の情報提供を行っている
- エ.在宅自己腹膜灌流指導管理料を過去1年間で36回以上算定している
- オ.腎移植について、患者の希望に応じて適切に相談に応じており、かつ、腎移植に向けた手続きを行った患者※2が前年に5人以上
- カ.当該医療機関において献腎移植又は生体腎移植を実施した患者が前年に2人以上
※1: 2022年3月末時点で導入期加算2の届出医療機関は、2023年3月末まではイ、ウ、エを満たしているものとする
※2: 腎移植に向けた手続きを行った患者とは、日本臓器移植ネットワークに腎臓移植希望者として新規に登録された患者、先行的腎移植が実施された患者又は腎移植が実施され透析を離脱した患者
【その他の人工腎臓の加算】
時間外・休日加算(入院中の患者以外) 380点
17時以降開始もしくは21時以降終了又は休日の場合
障害者等加算(1日につき) 140点
著しく人工腎臓が困難な障害者等の場合
透析液水質確保加算 10点
月1回以上水質検査を実施し、関連学会から示されている基準を満たした血液透析濾過用の置換液を作製し、使用している場合。施設基準を満たし届出が必要
下肢末梢動脈疾患指導管理加算(月1回) 100点
下肢末梢動脈疾患の重症度等を評価し、必要な指導管理を行った場合。施設基準を満たし届出が必要
長時間加算 150点
通常の人工腎臓では管理が困難な兆候を有する患者に6時間以上の人工腎臓を行った場合
慢性維持透析濾過加算 50点
「透析液水質確保加算」を届け出た医療機関で慢性維持透析濾過(複雑なもの)を行った場合。「複雑なもの」とは、血液透析濾過のうち、透析液から分離作製した置換液を用いて血液透析濾過を行うこと