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保険薬局トレンドリポート

地域住民の健康に対する意識を高める「健康サポート薬局」としての新たな取り組み

正能 佳子 先生(写真:右)小栁 悟 先生(写真:中央)小坂部 翔 先生(写真:左)

クオール株式会社
東日本支社 関東第二薬局事業本部 関東第五事業部
事業部長 薬剤師
正能 佳子 先生(写真:右)

第一ブロック 統括主任
(兼)QOLサポートクオール薬局京王八王子店 薬局長 薬剤師
小栁 悟 先生(写真:中央)

健康サポート薬局推進室
小坂部 翔 先生(写真:左)

(東京都八王子市)


東京都内でもまだ数少ない「健康サポート薬局」。その一つとして、今回紹介するのが「QOLサポート クオール薬局京王八王子店」です。もともとはドラッグ併設型調剤薬局でしたが、平成28年6月にクオール㈱が考える健康サポート薬局を目指すモデル店舗として改装を実施。また、八王子市は、東京都内の中でも社会保障に関し、市民の満足度が比較的高いエリアで、子育て等に力を入れている町です。この店舗は、半径1km以内近隣に80以上の医療機関があるところに立地しています。そうしたエリアで、いかに地域の健康サポートに関わっているのか。その取り組みについて伺いました。

社内外での研修を通して新たな薬局像にふさわしい薬剤師を育成

—貴店では、「健康サポート薬局」として、地域とどのような場面で連携を行っているのでしょうか。

小栁先生:
地域包括支援センターとの連携など行政はもちろんですが、例えば、薬剤師によるお子さんへの薬の飲み方セミナーや管理栄養士による離乳食のアドバイスができる薬局として、八王子市の子育て支援企業に登録したり、携帯ショップやスポーツクラブなどの他業種との連携も行っています。

—携帯ショップというのは意外ですね。

小栁先生:
携帯ショップでは、調剤薬局同様待ち時間がありますよね。そうした待ち時間の間に薬剤師による健康チェックを受けてもらうのはどうかと考えたんです。薬局というのは「処方せんを出して薬を受け取るところ」と思っている方は、まだまだ多いのが現状です。そこを、「病気じゃなくても、調子が悪くなくても、行けるところなんだ」と周知するのが第一段階。地域の企業と連携してその場を設けていきたいというのが私たちの考えです。

—健康サポート薬局として申請する前に、社内外での研修も受けられたのですね。

店内写真

小栁先生:
まず、社外の研修では、研修実施機関の研修を受け、まず薬局利用者の方の症状・相談内容に的確に応えるためにはどうしたらよいかを学びました。例えば、利用者が頭痛の相談にいらっしゃった際には、痛み止めのOTCを売るだけではなく、症状によっては医療機関への受診をおすすめするなどの対応方法について学びました。また、社内の研修では、早い段階からスキルを身につけるためにセルフメディケーション研修なども行われていて、同様のことも学んでいます。また、私自身は社内研修のファシリテーターもしています。元々社内で実施されていた研修にも、かかりつけ薬剤師・薬局や健康サポート薬局としての機能に必要な研修が網羅されているのは心強い教育体系だと思います。

—若手を育てようという社を上げての真剣な姿勢が感じられますね。

正能先生:
病院に行く前のファーストアクセスとして、まず薬局に相談に来てもらえるようにする。それが健康サポート薬局の役目です。その役目にふさわしい薬剤師を自社や店舗で育てる。その意識は会社として強いですね。

—店舗では、どういった取り組みが行われているのですか?

小栁先生:
当店は、簡易血液検査も少しずつ広めており、その対応を若手の薬剤師も担当しています。測定の中でご相談になることもあり、食事や運動はどう気をつければいいかのアドバイスをし、必要に応じて受診勧奨もする。測定して終わりではなく、そこからどうアドバイスするかを研修で学び、それを店舗で実際のお客さま対応として実践するというスムーズな流れができています。さらに、各薬剤師が経験した事例などは、必ず全スタッフで共有し、一人の経験で終わらせず店舗全員のスキルに役立てる。そうした情報共有もスタッフの育成に役立っていると思います。

健康チェックやセミナーで気軽に入れる場所としての認知を広める

—貴店での健康維持・増進支援に関する具体的な取り組みを教えてください。

店内写真

小栁先生:
まず、処方せんを持たずに誰でも利用できる場所として、健康チェックコーナーとセミナールームをご用意しています。健康チェックコーナーでは、さまざまな測定を気軽に行うことができ、血圧計のほか筋肉量、水分量、ミネラル量が測れる体組成計も設置しています。また、認知機能バランサーでは、ゲーム感覚で脳の健康度をチェックすることができます。セミナールームは月に1回のペースでセミナーを開催しています。薬剤師による薬に関する情報のほか、常駐している管理栄養士による食事に関する情報にも皆さん、興味を示されますね。

—管理栄養士が関わるセミナーはどんな内容のものを実施されているのでしょうか?

小栁先生:
内容は毎回変わるのですが、“減塩”をテーマにしたセミナーは人気でした。高血圧の患者さんに向けてと限定するのではなく、例えばお子さんに必要な塩分量など、ご家庭で今すぐ役立つ情報や知識をこの薬局で得てもらう。塩分のほかにも、脂質や糖質など、生活習慣病につながる情報はとくに興味を持ってもらえます。

—薬局の間口が広がることで、お客さまも様々な相談がしやすくなりそうですね。

外観写真

小栁先生:
つい先日は、別の薬局で調剤してもらっているご高齢のお母さまのお薬についてご家族から相談を受けました。病院から1日3回の処方の薬をもらったのだけれど、お母さまが食事をするのは1日に2回。その場合、どのタイミングで薬を3回に分けて飲ませればいいのかといった内容です。処方内容は不明でしたが、服用タイミングをずらしたり、場合によっては飲む回数を減らせるかもしれないことをお話ししたり、医師や利用している薬局に行って、お薬をきちんと飲めていないことをお話しすることをアドバイス。それだけでも、「そうか!」と安心した顔をされてお帰りになられました。患者さん本人だけではなく、ご家族も気軽に相談できる機会ができていることが嬉しかったですね。

—他にどういったことが有りますか?具体的には、時間外の電話対応も行われていらっしゃいますが、実際にお客さまから緊急の連絡が入ることはありますか?

小栁先生:
時間外の電話対応も行っていますが、週末の夜は特に多いですね。インフルエンザの時期になると、お子さんにタミフルを飲ませたのに、2回とも戻してしまったけれどどうしたらよいか、といった連絡もあります。「薬局は閉まっている時間でも、電話がつながるので助かります」という声を実際に聞くと、私たちの存在が地域の皆さんの安心感につながっているのだという実感を持つことができます。

—ただお薬を渡したり、売ったりするのではない、健康サポート薬局としての位置づけがよく分かります。

小栁先生:
もちろん、処方箋でお薬をお求めになっていらっしゃるお客さんが今は大半です。ただOTCを販売する場合も、まずは症状を聞いてその薬を前に飲んだことがあるか、副作用はどうか、今他に飲んでいる薬はあるかなどの必ず聞き取りをしてから販売をしています。その結果、別のお薬をすすめたり、薬を見合わせ医療機関への受診をすすめることもあります。OTCも健康サポート薬局の要件で必要な品目数を揃えることが目的ではなく、地域の方が困っている時に対応できる薬があるかどうかということが大事だと思っています。時々、近隣の薬局さんから在庫の問い合わせを頂くこともあり、同じ地域の薬局同士の連携にも役立っています。

—まずは、健康サポートを行っている場所だと認知されることが大事なのですね。

外観写真

正能先生:
店舗の外にデジタルサイネージで情報を流すことで、道行く人に分かってもらい、「ちょっと入ってみようかな」と思ってもらえる工夫もしています。最近では、「簡易血液検査を行っています」という表示を見て、入ってきてくださる方もいらっしゃいます。一回、利用してもらうと、また次にとリピーターになる方は本当に多いです。簡易血液検査しかり、イベントしかり、知ってもらう、来てもらうきっかけづくりが一番の課題です。

健康な時から深い関わりを持てる薬局、それが“健康サポート薬局”

—最後に、今後の展開や取り組みについておきかせください。

小坂部先生:
未病の人に、健康に対しての意識を高めてもらうにはどうしたらいいかを考え、実践するのが一番の課題ですね。携帯ショップなど他の業種の方とコミュニケーションとりながら、地域全体で顔の見える形で薬局にできることを広げていきたいと考えています。

小栁先生:
患者さまではなく、“利用者”を増やしていく。その意識を大切にしていきたいです。健康で元気な時から関わり合いを深め、自身やご家族が病気になったとき、在宅になったときにもシームレスにサポートできる機関に将来的になっていければと考えています。先々まで広く深くサポートできるよう、地域を取り巻く様々な職種の人との連携も強化していきたいです。

集合写真

正能先生:
かかりつけ薬剤師機能をしっかり果たし、家族が体調を崩した時のファーストアクセスとして使ってもらう。そして、未病の方にも健康を意識してもらえる場にしたいですね。まずは、当店で簡易血液検査を受けてもらい、それが健康診断を定期的に受けるきっかけになる。そんな流れになるのが理想です。地域の方と薬局との垣根がなくなり、薬剤師が名前で呼んでもらえるような関係性も築いていきたいと考えています。

—この度はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。

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